Ten Minutes With Doul
January 15, 2021
2003年生まれ、現在17歳のDoul(ダウル)。2020年9月16日にリリースされた“16yrs”を皮切りに“Don’t”、“BYE HOUSE”と3週連続で配信シングルを発表し華々しくデビュー。その波及の仕方は「日本のみならず」という枕詞すら不要なほど、端から射程距離をグローバルに向けた強度で、各種SNSを中心にいきなり話題を呼んでいる。現在サブスクリプション・サービスでは日本よりも南米やロシアを始めとした海外の方が多くのリスナーがいるそうだ。 12月4日には早速次なる新曲“Howl”を発表し、全世界に向けてコンスタントに「Hello!」と繋がりを求めている。しかし一見スタイルの軸が見えないほどに楽曲によって様変わりするサウンド・アプローチは謎の存在感を放っているし、SNSや映像に見て取れる屈託のない17歳等身大の姿を見てもまだ素性がつかみきれていないだろう。 そんな作詞・作曲はもちろん、演奏・編曲から、スタイリング・アートワークに至るまで、マルチにプロデュースしていく彼女の初インタビューをここに掲載する。多面的なDoulの魅力に触れる一助になることを願う。 Eric Clapton“Tears In Heaven”で弾き語りの気持ちよさをわかってしまった 音楽に触れた最初の記憶はいつで、どんな音楽でした? 生まれた時から洋楽ばかり聴いていて、耳に残っている最初の音楽は親の車で流れていたLinkin Parkでしたね。お父さんはLinkin ParkやEminemが好きで、お腹の中にいた内からずっと聴いていたんだと思います。 Linkin、Eminemが胎教音楽だったんですね(笑)。ではご自身が最初にのめり込んだ音楽で言うとどうでしょうか。 ハマったのは小学校の高学年くらいの時に聴いていたFlo Ridaです。リズムを聴いた時に不思議な感覚を受けました。身体の中から低音をガンと突き上げられるようなサウンドとか、ラップのメロディにうまく乗せた時の気持ちよさは今聴いていてもかっこいい。彼の声やでっかい容姿も好きです。 当時からお住まいは福岡でしたよね?なかなか周りと好きな音楽を共有できなかったのではないでしょうか? 周りの友達とは合わなかったですね。でも小学校低学年くらいから気づいていましたし、そのまま生きてきたから、周りと違うことが当たり前という感覚です。 好きな音楽以外にも違うと感じることがあったということですか? そうですね。例えばみんなはあまり人前に立ちたがらないけど、私は当時から好きでした。ダンスをしたり、中学校では英語でスピーチやディスカッションをしたり、とにかくステージや人前に立ちたかった。 なるほど。では実際に自分で音楽をやるようになったのは? 小学校6年生の時です。サーファーの叔父がギターを持っていたのを見てかっこいいと思って、自分でお小遣いを貯めて2万円ぐらいのアコースティック・ギターを買いました。でもその時は音もうまく鳴らせず、1年ぐらい放置していて。すごく暇だったある時、もう一度ちゃんと練習しようと、初めて弾いたのがEric Claptonの“Tears In Heaven”。ちょっと音が出るようになって、弾きながらそこに歌を乗せた時の気持ちよさを一瞬でわかってしまったんです。もうその日から1年間は毎日ギターを練習するようになりました。 自分で弾き語りをすることの面白さを知ってしまったと はい。最初は家族や友達に聴いてもらい、その後ちょっとしたイベントで歌うようになりました。それで14歳の時にあるイベントで歌ったら、聴いたお客さんが泣いてくれたんですよ。それを見て自分は音楽を届ける人になるんだと思って、アーティストになるという夢を持ちました。 それはターニングポイントですね。 その時、人生が変わりましたね。それまでずっとキックボクシングや少林寺拳法をやっていて、プロの格闘家を目指していたんですけど、音楽の方がグワーッと上回った感覚がしました。もちろん格闘家としての自分もすごく大好きだけど、音楽をしている自分の方がキラキラしていて、好きになってしまったんですよね。 その転機を迎えた頃のレパートリーは? Anne-MarieやMarshmello、ONE OK ROCKの曲とか。あとこの頃からすでにオリジナル曲も作り始めていました。 謎の存在であることがDoulの魅力 でも持っている楽器はアコースティック・ギターですよね。自分で作る音楽はどういうスタイルでやろうとしましたか? Jack Johnsonもすごく好きですし、ダンス・ミュージックやEDM、昔のロックも大好き。幅広い音楽をやりたかったので、その全部を融合させて自分のスタイルを作っていく。やりたかったのはそんな「Doulの音楽」でしょうか。でもルーツを知っている人にとっては聴き馴染みがあるなと思ってくれたらいい。 それはつまり自分の作る音楽は、ルーツの掛け合わせであることに、自覚的な姿勢も持っている。 でも私は音楽のルーツや理論のような詳しいことを全く知らなくて。全てフィーリングでやっているので「そのコードに、このメロディを乗せるんだ!」みたいな意外性が、オリジナリティとして出ればいいなと思います。自分の中では常に定まってないことをしている感覚です。 そのいい意味での定まってなさはデビューにあたって発表された3曲、“16yrs”、 “Don’t”、 “BYE HOUSE”に表れている気がします。全部サウンド・アプローチが違っていて、幅広い。 そうですね。“16yrs”のサビのメロディとサウンドは、盛り上がるけどどことなく懐かしさも感じてもらえると思って作りました。私の年齢でこんなサウンドをやっている人は周りにあまりいないし、自分くらいの若い人たちにとっては昔の音楽を聴いてくれる入り口になれたらいいなと。 逆に“Don’t”のゴリゴリのサウンドはイントロのフレーズを鍵盤で適当に弾いて思いついたものを全曲一緒に作っているサウンドプロデューサーのURUさんと広げて行きました。他の曲もですが、手探りでまさしく定まり切っていない面白さがあります。そして“BYE HOUSE”はアコースティックの弾き語り。自分の色んな要素をこの3曲に散らばせました。どれもジャンルが全然違うし、それぞれに全く違う反応が来るのがちょっと嬉しくて。 だからその3曲を通して聴いても、Doulが何者なのかまだわからなくなるんですよね(笑)。 本当に謎だと思います。Instagramを見ても、YouTubeを見ても、曲を聴いても謎(笑)。でも「こいつ何者?」と思われるのが好きなのかもしれません。性別もわからなくていいし、年齢が今17歳であることも本当はどうでもいい。ずっと謎のままだけど、興味をもって掘り下げていく内にハマっていく。そんな人が増えてほしい。 物事の違った見方を提示していく、実体験に基づいたDoulの表現 その謎でわからないことの魅力は一つあるとして、一方でDoulというアーティストはどういうメッセージを伝えたい、表現したいですか? 先ほど話した「周りの人たちと違う感覚」とも通じますが、一番は、昔から「捕らわれる」ことに違和感があります。そのことによって好きなことを出来ない人がこの世の中にはたくさんいると思うんです。実際私の周りにそういう友達もたくさんいたし、親やおばあちゃんの世代に遡るともっと出来ない人が多かったと思う。だからこれから何か好きなことをやりたい人たちに、どうにか自分を大事にして頑張ってほしいという思いがあります。 世の中を変えていくというほどのことではないけど、物事には違った見方があるんだよという別の選択肢を、Doulの容姿や言葉、そして音楽で表現していくことを、これから先もずっと大事にしていきたいですね。 お話を伺っているとDoulさんのアーティスト活動のモチベーション一つとして、「現状への違和感」というのが大きいように感じました。 本当にそうです。「なんで?」と思うことが、すごくありますね。でも反抗したいと思っているわけではなくて、「せめてもう1個考えを増やそうよ!」というのを提示したい。 Doulさんにとって、一番大きな「なんで?」はどういうことですか? 自分にとって大きいのは、好きになる相手が男女どちらもなんです、つまりバイセクシャル。それに気付いたのが中学の時で、女の子を好きになった。だからその時自分はboyishではなく本当のboyになりたくて。それは自分にとっておかしい感情ではなかったし、あの女の子がいいなと思ったら、もちろん誘いにいく。でもそのことを家族や友達に言ったら受け入れてくれなくて、初めて「なんで女の子が男の子を好きになるのが当たり前なんだろう?」と思いました。まだLGBTQの知識が自分にも周りにもなかったし。 […]
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